【イベントレポート】2020 and Beyond! 東京オリンピック・パラリンピック以降のグローバル人材に求められる意識と行動とは? ~スポーツ文化の推進による社会課題解決~

2020年、東京オリンピック・パラリンピック開幕まで約1,000日。
「スポーツ」は有効な国際交流の役割を担っており、スポーツを通じ、私たちはどのような意識や行動をもって国際社会と接していくべきなのでしょうか。またスポーツ文化の推進はどのような社会的な意義をもたらすのか。「スポーツ」x「グローバル」x「社会課題解決」のイベントレポートをお届けします!

まずは、モデレーターの横山氏がご登壇。今回のゲストお二人とも、横山氏の留学指導の受講生とのことで、お二人をご紹介頂く形でイベントはスタートしました。

株式会社ユーフォリア代表取締役 橋口 寛 氏による基調講演

まずは、橋口氏からのゲストトークです。「Beyond2020 スポーツが変えていく未来」というテーマでお話頂きました!

<ゲストスピーカー>橋口 寛 氏
株式会社ユーフォリア代表取締役

早稲田大学教育学部卒業。米ダートマス大経営大学院修了(MBA)。アクセンチュア戦略グループ・企業再生等を経て現職。株式会社ユーフォリアでは、スポーツ選手のコンディション管理システム「ONE TAP SPORTS」シリーズを、ラグビー日本代表をはじめとする多くのトップチームに展開している。慶應義塾大学大学院SDM研究科特任講師。熊本大学大学院特任教授

◆私のことについて

スポーツ大好きな幼少期から、高校、大学、当初小説家を目指していたという社会人。そして、仕事に目覚め、横山さんと出会い留学を経験。新規事業やリストラといった企業再生を経たのち、お父様の病気も相まったタイミングで、現在の企業家となるまでの道のりを、ご紹介いただきました。その後の講演内容にも通じる、橋口氏の人生の分岐点や様々な決断のバックグラウンドを知る、興味深いお話でした。

◆ONE TAP SPORTについて

「始まりは2012年。3年後のW杯に向け、当時のラグビー日本代表にしてみれば、あまりに高すぎる目標と言われた勝利を目指すエディ・ジョーンズのもと、選手の状態を可視化するデータベースを作って欲しいとの依頼がありました。それが、選手の今の体調・トレーニング記録・ケガの履歴などを一括して管理・把握するツールです。」

23選手全ての状態の良い悪いをグラフで可視化。それら一連の取り組みで選手を強化した結果、W杯での奇跡の勝利を生み出します。元々ラグビーで始まったものが、今では30競技250チーム以上で使用されているそう。
「状態の可視化」をする目的は、ピーキング(大会へ向けコンディションを最高の状態にもっていくよう調整すること)と、けがの予防の2つ。可視化の方法は、位置情報、バイタル、動作、ライフスタイルなどの項目を、さまざまな方法でセンシングしデータ化しています。さらには、スポーツデータの3つのレイヤー(アクティビティ、コンディション、アウトカム)の全てにおいて、センシング技術で見えるものがどんどん拡大している、とのことです。

◆未来のことについて

「日本で大きな社会課題である医療費と介護費。これは、寝たきり増加が負担増の大きな原因です。我々が考えるプロスポーツにおける取組みは、トップアスリートだけに限定される問題ではなく、高齢者にとっても同じ構造が当てはまる。寝たきりのきっかけになる転倒や怪我は、下半身の筋量と骨量を上げることで予防できます。」
「具体的には、3つのレイヤー(※前述)において、運動をどれくらいして、休養をどれくらい取って、今の骨量と筋量がどれくらいだから将来どれくらい減りますよ、こうなるよ、を高齢者に適用することで、転倒のリスクがどれくらいあるか、といった予防や対策に応用出来ます。」
プロスポーツは宇宙開発と一緒、という橋本氏。そこで得たものが、一般に応用され活用されていく、という未来をお話頂きました!

◆イノベーションを起こすために必要なことは「多様性と辺境」

グローバル化とは多様性に身をさらすこと、という前提の上で、横軸に参加者の専門の多様性、縦軸にイノベーションの価値を置いた図を基に、「多様性(ダイバーシティ)は平均値を下げるが、イノベーションを生む」ことを、ご説明頂きました。

「多様性が低いとみんな均質で、アウトプットはばらつかない。逆に、高いとアウトプットはばらつき、平均値は下がる。変なアウトプットも増える。けれどもその中にこそ、イノベーションが生まれます。」

加えて、当時のラグビー日本代表の多様性の素晴らしさをお伝えいただき、
「重要なことは、そつなく平均値を上げたいのか?イノベーションを生みたいのか?を問うこと。また、己の中に多様性ありや?己の中に辺境はありや?に向き合うことです」と、お伝え頂きました。

◆問題をどう捉えるか。「問い」そのものが大事。

課題をどう捉えるかによってソリューションは全く変わる、と語る橋本氏。
「あらゆるソリューションは、設定された課題に対する回答であり、当たり前の問題定義からは、当たり前のソリューションしか導き出されない。」

2015年W杯におけるラグビー日本代表がやったのは、長年の問題定義からのリフレーミングでした。日本人は体格で劣るという通説を覆し、手先の器用さやスピードではなく、フィジカルに背を向けずに過酷なトレーニングを課して限界まで鍛え戦う、というエディージャパンのリフレーミングした問いは、当時は全く認められなかった。けれども、その「問い」が無ければ、歴史的勝利は生まれなかった。それは、辺境を生きる人が立てた問いだった、とのお話がありました。

最後は、スポーツをイノベーションのビーグルに、というメッセージとともに、
”イノベーターは、ソリューションの発見者ではなく、課題の発見者である”(パディ・ミラー)の言葉で、講演は締めくくられました!

公益財団法人 日本財団パラリンピックサポートセンター 推進戦略部 プロジェクトリーダー 中澤 薫 氏による基調講演

次に、中澤氏のゲストトークです。冒頭、恥ずかしいのですが~とのお言葉とともに、ご自身がスポーツに関わるきっかけとなる「原体験」のお話からしてくださいました。

<ゲストスピーカー>中澤 薫 氏
公益財団法人 日本財団パラリンピックサポートセンター 推進戦略部 プロジェクトリーダー

早稲田大学スポーツ科学部卒業、在学中LA Dodgersでのインターンを経験。海外放浪、ITベンチャー企業広報を経て’13年7人制ラグビーのクラブチーム「サムライセブン」立ち上げに参画。’14年フルブライト奨学生としてNew York Universityへ国費留学、Master of Science in Sports Business修了。学業の傍らNYでスポーツマーケティングのコンサルティング会社に勤務。パラアスリートとの出会いを機にパラスポーツの世界に活動の場を求め、2016年帰国後より現職。現在はイベントの企画運営を中心に、パラリンピック、パラスポーツの普及啓発活動に取り組んでいる。

◆パラスポーツに関わるきっかけ

中学の作文で、スポーツに関わりたいことを宣言していた、という中澤氏。
2000年シドニーオリンピックで、努力する選手の姿や、国境を越えて友情を深めている選手など、スポーツを通じて様々なことを学んだそう。「スポーツの素晴らしさを伝え、ひとりでも多くの人にスポーツと触れ合って楽しんでもらいたい」との想いが芽生え、今でも考えていることは一緒、と語ってくださいました。

大学のインターンでロスを訪れた際、球団が企業の経営体として独立し、専門の知識を持ってトレーニングを受けた人が活躍しているという、日本のプロスポーツ界と全く違う状況を目の当たりにし、将来アメリカに学びに来なければと痛感。

NY大学へ留学し(その際に横山氏、橋口氏に大変お世話になったとのこと)、どうすればスポーツで稼げるようになるのか、日米でこんなに収支に差が出るのはなぜかを、プロスポーツが乱立しながらも自立・共存しているNYで学ばれました。

その後すぐ、プロスポーツ→パラスポーツへ転向されます。
その理由を話す前に、「障害者へどんなイメージを持ちますか?」と会場へ質問が投げかけられ、パラセンターが制作した映像を投影いただきました。

その映像は、とてもパワフルで鮮烈にカッコいいパラアスリートの姿。

「自分も出会う前は、かわいそう、人の手助けが必要など勝手なイメージを持っていました。
けれども、パラアスリートと交流してみると、めちゃめちゃポジティブで、人一倍、肝の据わったキレ者。世の中で前に出るべき優秀な存在だと感じました。

ミッションがしっかりし、一人の人間として社会に影響を与えたいと強いメッセージを持っている人たち。この人達と、もっと世の中を面白くできる!そのために自分の時間と力を使いたい!」と、迷わず飛び込んだそうです。

◆WHAT WE DO(ミッションと具体的活動について)

パラリンピックサポートセンターは、「パラリンピックには、社会を変える力がある。人に感動と勇気を、そして気付きを与える力がある」というコンセプトのもと活動されています。

具体的に中澤さんが取り組まれているのは、7つのミッションの一つである「インクルーシブ社会推進」。多くの方にパラスポーツを知ってもらうための普及活動です。
これを「目撃する」ー「体験する」の二つの方法で取り組まれ、大型イベントでは、インパクトと斬新さを大切に、どこでも見たことない攻めた内容で、パラスポーツと縁がなかった層を繋ぐ企画をされています。
例えば、パラ駅伝は、健常者と障害者が一緒に参加するイベントとして、アイドルやゆるきゃら、芸人などが参加したり、パラフェスでは、音楽とパラスポーツの融合をテーマに、特に若い人向けに選手や競技を知ってもらう工夫をしているそう。
また、あすチャレ!シリーズとして、「体験」を通じてパラスポーツの楽しさ、パラアスリートとのすごさを実感し、障害者との距離を縮めるなど、その他にも、ここでご紹介しきれないほどの、興味深い企画をたくさんご紹介頂きました!

◆我々のゴールは何か。

「2020パラリンピックの成功が最大のゴールではなく、その先のインクルーシブ社会を実現すること」と、語る中澤氏。

では、インクルーシブ社会とは何か。
障害は人でなく社会にある、とのお考えをお伝えくださいました。

「仮に、エレベーターがないこの会場の階段も、その場で助けてくれる人があれば、その瞬間その障害はなくなります。障害は人ではなく町や場所にあり、けれどもそこに助けてくれる人さえいれば、その瞬間に障害はなくなる。
無くせる障害は沢山あり、むしろ無くせない障害はない。それを実現することが、私がイメージしているインクルーシブ社会です。」

最後に、インクルーシブ社会をイメージして作った映像を投影頂き、
「どんな人でも楽しめる社会を、スポーツを通じて作りたい!」との強いメッセージで、講演は締めくくられました。

株式会社アゴス・ジャパン代表取締役 横山 匡氏による基調講演

次に、横山氏のゲストトークです。スポーツ、グローバル、アントレプレナーシップなど全ての根幹に通じる「人財」について、視座高くお話いただきました。

<モデレーター>横山 匡氏
株式会社アゴス・ジャパン代表取締役

東京都出身。中学校時代をイタリア、高校・大学時代をアメリカで過ごす。UCLA言語学部卒。在学中に日本人初のNCAAバスケットボールチームヘッドマネージャーを務める。
https://newspicks.com/news/1070863
1983年卒業以来留学指導に携わり続け1998年より現職。出願指導部門の責任者から社長、会長を担い現在はアゴス・ジャパン代表取締役。社外活動では、一般社団法人HLAB共同創立者兼ヘッドコーチ、株式会社ワークライフバランス社アドバイザー、 JAOS海外留学協議会理事、UCLA Extension プログラム開発日本代表など数多くの団体・組織の支援や大学における講義などを通じ、「世界を舞台に活躍したい方々の応援と個々の価値の最大化に気付かせるきっかけプロバイダー」として活動している。

◆「好きなことを一生懸命やること」

アスリートやビジネスマン、アントレプレナー問わず根幹にあるのは、「あなたの人生ですよ」ということ。横山氏は、著書の中で「情熱と直感ほど正しいものはない」と書かれており、「あなたは何を思い行動を起こしてますか?」を大切にされているそう。
「好きなことを一生懸命やる。やりたいことで勝とうよ、思っていることで動いてみればいいじゃん(これが今日一番伝えたいこと!)」と、お話いただきました。
また、日本社会のもったいない部分は、「極めて優秀な人がすでに勝っているところにいく傾向が強い社会だ」と横山氏。「自分が行くから勝たせるんだという人が増えなければ、勝つ人も増えない。お前の勝ち方を考えろ」とお伝えくださいました。Winnerが増える社会、敗者のレッテルを貼るのではなくやり直しができる社会を、活動を通じて大切にされています。

◆「グローバル人材」という「人種」がいるわけではない

「そもそも本質は人材の話で、グローバルが能力のように語られることが違和感。グローバルは人材の応用範囲でしかない」との見解をお話くださいました。
その人材において大切なのが、問いを立てられる能力。
横山氏が、海外の高校4年間はこれだけ学んだ、という3つが、
・What do you want to do?
・What do you think?
・Why
とのこと。その結果、自分の思いを自分の意思で語る意識が育ったそうです。
「つまりそれは、正解ではなく自分の答えを探すこと。自分への問いが立たないと、自分の答えは立たない。アスリートもビジネスマンもアントレプレナーもすべて一緒。自分という人間の深掘りと、それをどこに当てはめると勝てるのか、ということです。」
また、国際社会で活躍する人財へのステップとして、「まず大前提に、自分が持っている特性を知ること。能力は結果論で、特性を社会が価値と認めるところに繋いだ時に、能力と認められる」とのことでした。
多様性については、「100年前から当たり前にあった。多様性自体が価値なのではなく、ミックスして化学反応を起こし、新しい価値観が生まれることが価値」とのこと。その上で、グローバル人材の定義を、「どこでも」「だれとでも」「そこそこ」「自分らしく振る舞える」「人財」とのお考えを、お伝えいただきました。

◆CAN DO と WILL DO

「他の人との比較ではなくあなたができることにフォーカスすることであり、それは自分の武器を知って応用し価値に繋げること」と話す、横山氏。
「人生は全てにおいて、選択肢を知って、選んで、納得して、行動して、enjoyすること。感じちゃった直感を信じて動けること。そのためには、動こうとする人を応援できる、想いを持った人が行動に移していける社会こそが、社会課題解決に一番近づいていくためのメンタリティと行動意識ではないでしょうか」と今回のテーマのまとめとして、お伝えいただきました!

ディスカッション/質疑応答

続いて、会場からの質疑応答に答えるセッションです。ウェブで受け付けた多くの質問に、ご回答頂きました(以下、質問の一部をご紹介します!)

<会場からの質問>「世界の中での日本のインクルーシブ度は?」「なぜ日本のプロスポーツは欧米のような強さがないのか」「日本がスポーツビジネスでもうけるには?」「皆さんの人生の理念を聞きたいです!」「やはり一回は海外に行かなければいけないか」「障害へのソフト面(心の壁)を変えて行くには?」「仙台は日本の中で失敗の寛容性においてどれくらいの位置づけか」「引退後の選手の活躍について」「スポーツで社会貢献することに対して、利益は必要か」

イベントの最後に、橋口氏より、
「今日の話に出てきたような、スポーツとスポーツ以外、目に見えるものと見えないもの、利益を出すことと社会貢献、のように二分化することそのものをやめることが、大切ではないか」との振り返りから、「割り切りは魂の弱さである(亀井勝一郎)」というご自身がお好きな言葉を挙げながら、「どちらかではなく、それぞれに問いを持ち、常にモヤモヤを抱えながら前に進みたい。それが、インクルーシブな社会というものに繋がるのではないか。」との、お話がありました。

また横山氏より、当センター佐々木・竹川との繋がりから今日の機会が生まれたことを受け、「縁をどう繋いでいくか。今日こうして出逢った皆さんと、どう2回目があるのか考えられるきっかけになれたら」とのお言葉をいただき、第二部の交流会へと続いていきました!

2020年東京オリンピック・パラリンピックとその先に向けて、訪れる未来を楽しみに待つのではなく、「その時にどんな未来を迎えたいのか」を今私たちが描き、この瞬間からの私たちの在り方と行動のひとつ一つによって未来は創られていく、と実感するイベントでした。ゲストの方のお話、会場とのセッション、生み出されるその場の空気や温度感を、是非味わいに来てください!次回のイベントもお楽しみに!!

© 2017 INTILAQ