【イベントレポート】~科学技術の力で新たな産業の創出~ 研究者集団が挑むソーシャルイノベーション

2018年3月15日(水)、株式会社リバネスの取締役副社長CTOの井上浄氏をゲストにお迎えし、「~科学技術の力で新たな産業の創出~研究者集団が挑むソーシャルイノベーション」と題したレクチャーを開催しました。

登壇者プロフィール
井上浄(いのうえじょう)氏
株式会社リバネス取締役副社長CTO
慶應義塾大学特任准教授/免疫研究者/博士(薬学)/薬剤師

第1部:井上氏による基調講演

第1部では、井上氏の自己紹介や自身の会社概要、今後の展望について、基調講演を行いました。

「世界初の事実が、目の前で、自分の手で、証明できる」

井上氏は2002年、大学院生の仲間と株式会社リバネスを創業しました。当時23歳、大学院在学中の事です。

その頃も今も、研究を心から愛している井上氏。のめり込んだ理由を「世界初の事実が、目の前で、自分の手で証明できる、それがすごく面白かった」と語ります。
進学をしていくと多くの学生は「研究するか、就職するか」の選択に悩みます。しかし、井上氏は常識を疑いました。選択する必要はなく、全部出来る方法を考えたほうが良いのではないか。そこで「大好きな研究をし続けられるちょっと変わった研究所を作る」べく、リバネスを創業しました。
これからの時代は、「研究者=大学にいる」という常識にとらわれず、自分のやりたいことが研究できる環境を自ら作っていくような精神を持つことが、研究者の在り方としてふさわしいのではないか、と井上氏は言います。

リバネスの4つの事業

次に、リバネスで行っている「教育応援プロジェクト」、「人材応援プロジェクト」、「研究応援プロジェクト」、「創業応援プロジェクト」を紹介いただきました。この4つのプロジェクトは、子どもたちが科学に興味をもち、研究者として成⻑し、その研究成果を社会に還元するという全てのプロセスを一気通貫で応援するものです。

教育応援プロジェクト」では、「身近なふしぎを興味に変える」をコンセプトに、小学生〜高校生に対し、研究の魅力や想いを伝える出前実験教室などを行っています。また「人材応援プロジェクト」では、「ポスドク問題を解決し、研究者が活躍できる社会を作り出す」をコンセプトに、大学や企業での研究人材育成などを行っています。「研究応援プロジェクト」では、様々な受託研究サービスを開始し、また若手研究者の研究キャリアを支援する「リバネス研究費」を行っています。さらに採択に至らなかった競争的資金の申請書を集積し企業に開示する事で、⺠間からの研究費や共同研究に繋げる仕組み「L-RAD」を作っています。そして、「創業応援プロジェクト」では、研究シーズの発掘と創業支援を行う「テックプランター」を実施し、昨年だけでも140 のべンチャーの支援をしています。

「たった一つの”熱”が世界を変えるかもしれない」
リバネスは、2002年の創業から16年が経ち、スタッフは約70名、研究所は8つまで増えました。「リバネス=チャレンジングな研究者の集団」として、それぞれの研究者が自分の熱を持ち、それを新事業としてカタチにしています。ご紹介いただいただけでも、その数なんと15以上!ひとりひとりの熱から新事業がどんどん生まれているそうです。

「自分の進んだ道を正解にする」

第1部の最後に、井上氏から悩んでいる方へメッセージをいただきました。

誰しも、「自分の進んだ道は正しいのか」と悩んだことがあるかと思います。しかし、井上氏は、「自分の進んだ道を正解にする」ように行動することの大切さや、「自分で決め、人のせいにしない」こと、「未来を知れば、勝てる」こと、「それなら、未来を創れば良い」という考え方の大切さをお話しいただきました。

また、これまでは、「仕事=事に仕える」時代でしたが、これからは、「仕事=事を仕掛ける」時代と考えているそうです。”「研究者」である自らの価値とは何かを考えること。考えることをしないただの作業は、仕事ではない”、と捉え、チャレンジングな研究者集団を目指しています。

第2部:トークセッション

第2部では、当センターセンター長の佐々木とトークセッションを行いました。
基調講演を受けて、佐々木からの質問や、会場からの質問を井上氏にぶつけました。抜粋してご紹介します。

佐々木からの質問「次世代の子どもたちに好奇心を持たせる工夫はありますか?」

井上氏:「免疫」を専攻研究していますが、今でも新しく発見される免疫細胞があるんです。だから、「次の細胞を見つけるのは君だ!新しい細胞が世界を変えるかもしれない!」と子どもたちに伝えています。今までの研究でどこまで分かっていて、どこまで分かっていないのかを分かりやすく伝えることが大事だと考えています。

会場からの質問②「アツイ仲間をみつけるためには、どうすればいいですか?」

井上氏:自分のアツさを発信することが一番です!例えば、ファイナンスが苦手だとしても、専門の人を呼ぶのではなく、自分で勉強した方がいいです。明確にやりたいことが一緒であり、同じビジョンを目指して走りきれる人と一緒にやらないとうまくいきません。実は、私は初期メンバーと仲違いしたことがありません。日々の行動は別でも、ビジョンは同じなので、お互いに口出ししないのです。その結果、創業メンバーとは22年間も一緒に過ごしていて、今でもうまくいっています。

「さぁ、研究だ!」

イベントの最後に、井上氏から参加者の皆さんへこのような一言いただきました。一人一人が研究者マインドを持つことの重要性や、日々仮説を立て、検証することを実践してほしい、というお話しいただきました。

筆者の感想としては、時に情熱的に、時にユーモアを交えてお話しされる井上さんを見て、研究者のイメージが覆されました。研究の常識にとらわれず、仲間を大切に、なにより心からワクワクしながら研究されていることが伝わってきて、日本の研究分野における未来は明るくなりつつあるのではないか、と感じました。

INTILAQでは、このようなゲストをお迎えし、貴重なお話を聞くことができる講座を毎月開催しています。皆様のお越しをお待ちしております。次回もお楽しみに!

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