若き起業家たちが日本全国から仙台に集結、白熱した議論を交わす『仙台ソーシャルイノベーションナイト』。その第3回目が、2月1日(水)、INTILAQ東北イノベーションセンターにて開催されました。
ゲストスピーカーは、なんと豪華なこの3名!
(この日、INTILAQ東北イノベーションはオープン一周年記念の日だったので、豪華なのも当然です!)
浜松より来仙されたのは、ウィッグの自社生産を通じて”がん患者に寄り添う地域ケア”を行う株式会社PEERの佐藤真琴さん。
快活な笑顔がなんとも魅力的です。
1977年静岡県生まれ。社会人を経て入学した看護学校の実習で白血病の患者と出会い、がん患者のウイッグと地域ケアの必要性を知る。看護学校在学中に中国へ渡り、資金5万円でピア(個人事業)を起業。がん治療中もその人らしく生きられる地域づくりを目指す。静岡大学大学院工学研究科事業開発マネジメント専攻修了/看護師。
http://info558282.wixsite.com/peer
京都より来仙されたのは、インドネシア産カカオによる “カカオ革命” を仕掛けるDari K株式会社(ダリケー)の吉野慶一さん。
軽妙なトークで会場のムードを引っ張ります。
この日はお風邪のご様子で、「みなさんに移さないようにマスクで失礼します」とのこと。
1981年栃木県生まれ。18歳からバックパックで約60か国を旅する。世界の現状を憂いたり、出来ない/やらない理由を声高に叫ぶだけでは自分も世界も何も変わらないと29歳で脱サラ。「努力が報われる社会」になるよう、不条理な世界に一石を投じるのが人生の目標。投資銀行やヘッジファンドで元金融アナリスト。
http://www.dari-k.com/
東京より来仙されたのは、”0から6歳の伝統ブランド” aeru(株式会社和える)の代表、矢島里佳さん。
本日最年少、ふわっと優しい雰囲気ですが、ズバリと本質を突く鋭い着眼点からの発言に会場は何度もハッとさせられます。
1988年東京都生まれ。「日本の伝統を次世代につなぎたい」という想いから、大学4年時である2011年3月、株式会社和えるを創業、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2012年、幼少期から職人の手仕事に触れられる環境を創出すべく、赤ちゃん・子どものための日用品を、全国の職人と共にオリジナルでつくる“0から6歳の伝統ブランドaeru”を立ち上げる。
https://a-eru.co.jp/
いずれも、ご自身の事業が好調なだけでなく、メディアや講演会でも引っ張りだこの、新進気鋭の若手起業家、株式会社の社長です。
「和えるを知っている人はいますか?」という矢島さんの問いかけに、挙手する参加者は多数。大きな拍手も巻き起こります。
対して、京都を拠点として関西圏を中心に活動しているダリケー吉野さんが「すごいアウェーだな」とボヤいて、会場がドッと笑いに包まれるシーンも。この日も仙台の夜は、最高に温かく、熱い雰囲気です。
一部、ディスカッションのハイライトをご紹介します。
■議題1:なぜ株式会社にしたのですか? NPOなど他の法人格を選択しなかった理由は?
佐藤「ピアに相談に来る方々(がん治療による見た目の急激な変化に困っている人)は、『今』困っている。ソリューションをすぐに持って帰りたい。他の法人格が悪いというわけではないが、コンセンサスを取っているうちに人は死んでしまう。(私の事業では)スピード感、決定の速さが必要なのです」
吉野「株式会社の良い点は、他の会社に買い取ってもらえる、買収してもらえるところ。自分たち(小さなベンチャー)が10人20人を変えても、あまり世界を変えていることにならない。でも、日本や世界の大手メーカーが良い取り組みであると認めて、『うちでそれやってよ』と言ってくれたら、一気に世界の規模になる。吸収されるかもしれないが(そのことがネガティブに感じられるかもしれないが)、吸収されないことが目的ではない。株式会社には可能性があると思っていました」
■議題2:株式会社の経営者としてのゴールは?
矢島「和える家の家訓は『お母さんは若くあれ』。伝統と若い現代の感性を”和える”、その時代に応じた必要な伝統を若い人と繋げていくには、どこか良いところで私自身はマイクを置いて引退しないといけない。哲学が社内に育まれている状態になったら(事業の未来は)安泰だと思うんです。引退した50代の私は、若い感性に学ばせていただく」
佐藤「うちは消滅が目的。うちがやってきた(がん患者専用の)美容室や髪、(普通の街中にあるような)美容室とかどこかがその役割を代わりにやってくれるようになってほしい。(がん治療によって髪の毛が抜けるという)困りごとがあるから、うちの仕事は成り立っている。その困りごとは、世の中からなくなった方が良いじゃないですか。でも自分は事業がすごい可愛いし冷静に考えられない。だから心ある、資本のあるところに吸収していただくのが…」
■議題3:ビジネスとして回っている? いつから回るように?
矢島「3年目までは私が頑張れば危機を乗り切れました。創業者が試されるのが3年目まで。5年目からは創業者、経営者がどれだけ頑張ってもどうにもならない。会社が組織になっているかどうか、組織力が問われる。みんなで頑張れたか否かが5年目の壁と感じました。お母さん(創業者)が現場に立つと(商品が)売れるじゃないですか。だって創業者だから、誰よりも売れる(伝えられる)し、経理もやるし、掃除もするし。創業者を一言で言うと『何でも屋さん』。でも今はそれを全部社員に任せて、相談できる場所になろうと思って。私の頭の中に余裕ができて次の事業、未来と過去の時間をより鮮明に見られるようになる。そのために社員に『今を任せる』」
吉野「びっくりするくらい同じですね。(ビジネスが)回っているかどうかなら、回っている。でも違うことを言うとしたら、ダリケーは農家に勇気を与えるためにやってきたが、やっていることはただのチョコレート屋と同じじゃないか、そんなことやるために(会社に)入ったんじゃないと10人が一気に辞めていったこともある。チョコラティエを雇ったら、翌年にはみんな独立したり。日々、そんな感じでバチバチしてますね」(会場は爆笑)
佐藤「矢島さんの言うように創業者はトップセールスなんですよ。(でもそのままでは良くないから)10年になるちょっと前に現場の手を離したんですよ。そうしたらスタッフから『社長は何してる?』と聞かれても、答えられない。一時、『社長は仕事ができない説』が社内にありました」(会場はまたまた爆笑)
来場の一般参加者からは、
「社会の問題を解決するなど、事業がゴールした後は何をするつもり?」
「自分の子どもを育てるに当たって、みなさんのご両親はみなさんをどのように育てたか教えてください」
「起業したいと言う人がいたら、止めますか、応援しますか?」
などの質問が飛び交いました。
「メンター(師匠)のような人はいますか?」という質問に対しては、矢島さんの「人類が私のメンターです」という名言も。
質疑応答の最後には、INTILAQ東北イノベーションセンターの代表・竹川から「INTILAQは起業したい人を止めません、ぜひ(事業を)始めていただいて…」と応援のメッセージも。
また、ディスカッションの後はゲストスピーカーと一般参加者の方々が一緒になっての食事会も行われました。なんとそこでは、バレンタインを目前にしてすでに入手不可能なダリケー印のチョコレートの試食と販売(とろけるように美味しかったです、吉野さん、ご馳走様でした!)、さらに矢島さんの著書の販売も行われました。
佐藤さん、吉野さん、矢島さん、そしてご来場のみなさん。おかげさまで楽しく、そして勉強になる、充実したイベントになりました。本当にありがとうございます。またのご来場を、心よりお待ちしております!
レポート:INTILAQ ライター・イワタテ
!!!参加者募集中!!!
今回のイベントに連続して、仙台ソーシャルイノベーションナイトvol.4が、2/7(火)に開催されます!
vol.3のゲストスピーカーが「株式会社」を起業された方々だったのに対して、次回vol.4のゲストスピーカーは3名全員がNPO法人の代表であり、女性です。一体、議論にどんな違いがあるのか、どんな意見が飛び出すのか…興味津々です!
vol.3に参加された方も、そうでない方も、ぜひお誘い合わせの上、ご参加ください。
お申し込みはこちら:http://peatix.com/event/229346