皆さん、こんにちは!
今回は新しくスタートした企画、「卸町探検隊」の最初の記事となります。
※卸町探検隊とは、卸町にある企業に訪れてインタビューをし、その企業の伝統や想いを発信していくプロジェクトです。卸の町として栄えたこの町には伝統のある企業がたくさんあって、そこで働く人もとても魅力的です。その魅力について、私たちがインタビューを通してお伝えしていくプロジェクトです。ぜひ最後までお読みいただければと思います。
今回の探検隊メンバーはINTILAQインターンの髙橋と前田が担当しました。
お伺いした会社の概要
会社名:鳴海屋紙商事株式会社(以下 鳴海屋)
事業概要:和紙や印刷用紙などのいわゆる「紙」から、地元名産の各種お土産品の箱用の板紙・段ボールまで多数の紙類商品を扱う問屋。又、東北3大祭りの1つ「仙台七夕まつり」の飾りの製作・設置も行なっている。
※問屋:卸売業者のこと。メーカーから商品を仕入れ、小売業者に販売する業態
今回、お話を伺ったのは本部長の鳴海 幸一郎さんです。
一言一言が熱く、聞いているだけで私たちの心に闘魂が注入されていくような、エネルギッシュな方でした。
今回の取材では、最初に七夕で使われる飾りが作られている現場を見せていただきました。
普段は高いところにあってじっくり見ることができませんが、こうして近くで見ると中の骨組みからとても緻密に作られていて、作るのにとても手仕事の技術がいるものだなと実感できます。
また、素材に使われている和紙は吸湿する性質を持っていてすぐに色が褪せてしまうので、毎年作る必要があるのだといいます。
春の御彼岸辺りから飾りを作り始めて、秋の御彼岸まで約半年以上もかかる大掛かりな仕事です。
地域とのつながりと社会への貢献を大事に。
「鳴海屋」では地域や社会とのつながりを大事にしていて、震災で職を失った人やハンディキャップを持っていて中々社会に出ることができない人達に様々な仕事をお手伝いしてもらっているとのことでした。
鳴海さん自身も、親が障害を持っていた経験から障害者に接する際には特別扱いをするのではなく、対等に振る舞うことをとても大事にしていました。
この鶴は障害のある方に内職してもらった製品です。鶴の飾りは、とても多くの時間と想いをこめて作られています。鶴と鶴の間の棒はストローなのですが、これを均等の長さに切り、それを糸で繋げていくという細かいところまで丁寧に作られています。
創業134年の歴史
続いては「鳴海屋」の歴史についてお話いただきました。
「鳴海屋」は明治16年に創業され、現在まで134年続く伝統のある企業です。最初は雑貨屋のような形を取っていたそうで、それから和紙、障子紙を扱う卸業となりました。
第二次世界大戦の統制時代には弾薬を入れる箱用の紙を卸していて、その経験が現在のお菓子や水産加工品の箱などに用いられその取扱につながっています。
時代の変化に伴い、和紙や障子紙だけでは暖簾を維持していくことが難しくなったため、印刷用の普通紙の販売も行いながら、地域の小さな小売店も大切にする地域密着の卸売業として鳴海屋は進化していきます。
事業内容は時代の変化にあわせて柔軟に変わりつつも、“鳴海屋”という暖簾の文字は守り続けてきました。
七夕まつりと鳴海屋の想い
東北3大祭りとして有名な仙台七夕まつり。仙台に住んでいる方であれば、きっと毎年恒例の行事として楽しみにしている方も多いのではないでしょうか?
まつりの主役となるのは、皆様ご存知の吹き流し飾りです
この吹き流しの準備(製作・設置・片付け)を「鳴海屋」さんが行なっているのです。
普段はなかなか知る事ができない、仙台七夕まつりに舞台裏をこっそりと鳴海さんに教えていただきました。
8月4日 人通りの少ない早朝5時30分頃からにアーケード内に竹の取り付け
8月5日 大量の飾り(吹き流し)を鳴海屋の倉庫から市内各所に配達
8月6日 深夜2時から早朝9時30分までの間に飾り付け完了させておまつりスタート
その毎夜、防犯・防火のため夜22時以降はアーケード内の飾りを高さ2.5
メートルまで巻き上げる
8月7日 早朝8時30分までに巻き上げた飾りを元に戻す。夜22時以降は同様に2.5
メートルまで巻き上げる
8月8日 早朝8時30分までに巻き上げた飾りを元に戻す。この日は、まつりの最終日な
ので、夜21時から吹き流し飾り及び竹を全て撤去。日付が変わる前23時59分
までに笹っ葉一つ残さず撤去・清掃作業完了させる。
- 使い終わった竹は、鹿児島にある製紙メーカーへ送って紙にリサイクルし「竹紙」として生まれ変わっているそうです。
あれだけの吹き流しの設置・毎日の巻き上げ・巻き下ろし・片付けと大変な重労働です。
どうしてここまで大変な仕事を長く続けているのでしょうか?と鳴海さんにお聞きしました。
「仙台七夕まつりの伝統を陰で守るのは鳴海屋の暖簾の使命」という一心で続けてきたと、熱くお話いただきました。
鳴海さんのこの思いが七夕まつり盛り上げ、お祭りに参加した人々に感動を与えているのだと感じました。
和紙、板紙、印刷用紙と事業を繋げてきて、134年も続いてきた「鳴海屋」。
しかし、そんな問屋業界にも多くの問題が生まれてきました。インターネットの発達による卸売業の衰退、建物の老朽化、後継者の問題などです。
こうした問題を乗り越えていくためにも卸のビジネスモデルの次を考えていかねばならないし、時代とともに会社が変化・進化していくことが重要だとお話をお伺いしてお話は終了しました。
以下、鳴海さんのお話を聞いての二人の感想です。
前田:長い歴史や地域との根強い繋がりはそれ自体が会社としての強みになります。“人の繋がり”、“人への思い”それ自体が鳴海屋の強みなのかも知れないと感じました。仙台七夕まつりの裏側やそれを支えている人たちの思いを知ることが出来、今後、まつりを深く楽しめる気がしました。
髙橋:鳴海さんの熱く前向きな姿勢がとても魅力的でした僕自身、何度も仙台七夕まつりには行っているので今回のお話がよりリアルに感じられ、次回からはまた違った観点から七夕を楽しみたいですし、裏で頑張る人たちの思いをもっと多くの人に発信したいと思いました。
大学では学ぶことのできない本当に貴重な経験をさせていただき、大変勉強になりました。
最後に鳴海さんと記念の一枚。
鳴海屋の皆様、そして鳴海さん、
お忙しいところ、お時間をいただきまして誠にありがとうございました。