7月27日、仙台ソーシャルイノベーションナイトが開催されました。
今回のテーマは『若手「社会起業家」が見た光と影そして今後のビジョン』。
時として慈善事業やボランティアのように扱われることもある「社会事業」。若くして社会起業家として起業し、活動を続けている小林氏が見た”光”と”影”とは一体どのようなものなのでしょうか。
レポートをお届けします!
一般社団法人HLAB 小林氏による基調講演
まずは今回のゲストである小林さんによる講演から始まりました。
<<ゲストプロフィール>>
小林 亮介 様
一般社団法人HLAB代表理事
1991年東京都生まれ。桐朋中学・高等学校卒業、高校時代オレゴン州への1年間の交換留学を経て、2009年4月一橋大学、同年9月にハーバード大学に入学。2011年にリベラル・アーツ教育事業、HLABを立ち上げ、大学卒業後の14年に一般社団法人化し代表理事。高校・大学生を対象とするサマースクールなどの教育プログラムや、海外大進学を支援する奨学金、大学に紐付かない実験的な寮の設立と運営に取り組む。三極委員会の「デイビッド・ロックフェラー・フェロー」に、アジア太平洋地域を代表して選出、また世界経済フォーラム(ダボス会議)からグローバル・シェーパーズ・コミュニティに選出。大学在学中は政治・経済学を修める。
リベラル・アーツ教育を実現する寮生活、小林さんの挑戦について
「進路の選択肢は周囲の人や環境によって自然と規定されます。現在の日本の進路指導は学内の教員、家庭だけで決まってしまう。それ以外の選択肢を知らないから大学に入って目的を見失ったり、会社が何をやっているのかも知らずに就活してしまったりして、後悔する人が沢山出てきてしまいます。」と語る小林氏。
そこで小林さんが代表理事を勤める一般社団法人HLABでは”リベラル・アーツ”をテーマに、400人以上の高校生・大学生が寮生活を模した2~4週間の共同生活を行う、教育プログラムを展開しています。
高校生も大学生も、それぞれ全く異なるバックグラウンドを持って集まるこのプログラムは、多様性の中で学生達が互いに学び合う、”学びの還流”となっているのです。
そもそも社会起業とは?
「私は社会の問題は、問題が起こっている点が均衡点になっていることが原因だと考えています。私達の役割は、問題の起こっている社会の均衡点をより良い方向に導くことです。」と語る小林氏。
また、日本の「社会事業なのだからお金を求めるのは間違っている」という風潮にも問題があると言います。実際小林氏も社会事業で給料をもらうことに驚かれることがよくあるそう。
「事業の社会性と営利・非営利は本来関係ありません。」と小林氏は続けます。
むしろ社会事業は、”モノを仕入れて売る”といったような単純な仕組みではビジネスが成り立たないからソーシャルセクターになっているという背景を考えると、本来は単純なビジネス以上にお金に拘らなければならないとの事。社会事業で得るお金は、その事業を成り立たせるための収入なのです。
今後のビジョン
「高い金を出して学校に通う本質的な理由とは、何なのでしょうか?」と問いかける小林氏。
ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学が授業を無料で公開するなどの取り組みにより、もはや”授業の対価としての授業料”というモデルは成立しなくなりました。
「座学だけでは得ることの出来ない学びを実現する、”世代や国境を越えた経験の還流”を作っていく」という小林氏の力強いお言葉で基調講演は終わりました。
トークセッション
続いてモデレーターの竹川氏が加わり、トークセッションに入ります。
《モデレータープロフィール》
竹川 隆司(たけかわたかし)
一般社団法人IMPACT Foundation Japanエグゼクティブ・ディレクター
国際基督教大学卒業。野村證券株式会社勤務ののち、野村ロンドン、フィルモア・アドバイザリー執行役員を経て、2011年4月、Asahi Net International, Inc.をニューヨークに設立。同社の代表取締役社長として、大学向け教育支援システム事業のグローバル化を推進。2014年に帰国後は、現職のほか、宮城県唯一のフルマラソン大会である「東北風土マラソン&フェスティバル」の立ち上げと運営、ベンチャー企業の取締役なども務める。2006年ハーバード・ビジネス・スクールMBA。
アメリカ時代、小林氏は竹川氏の下で後輩として働いた時期があったそう。先輩後輩の2人により、和やかな雰囲気でトークセッションはスタートしました。
まずは竹川氏が、本イベントのテーマである”光と影”の”影”を掘り下げて行く質問を投げかけます。
竹川「事業を進める中で、どのような苦労があるのでしょうか?」
小林「一番難しいことは、”この事業を続ければ、必ず世界が良くなる”と言い続けることです。非営利組織ではお金をモチベーションにすることが難しいので、営利企業以上に言葉で皆を盛り上げなければならなりません。それでも事業を進めていると、どうしても順調に進まないときや気持ちが落ち込むときもあります。しかし、前に立つ人間が”良くならないかもしれないな?”と言っていては、どんどん人は離れて行ってしまう。”なんとしても前に進めなければ”という強迫観念に押しつぶされそうな時もありました。」
竹川「営利企業であれば最終的には金の有り無しで判断できますが、非営利では利益をどのように分配するかも含めて大変ですね。そんな中で、自分や社員の貰う金額というのはどのように決めているのでしょうか?」
小林「僕も社員も非営利事業からあまりお金は貰うようにしていません。私達のような非営利では営利企業と異なり、解散する際に会社内の留保は手元に入って来ないんです。残ったお金は全部寄付しなければならず、その分社会起業家はリスクを負っています。私達の事業にお金を出してくれる人がリスクを理解して納得してくれればその分私達が多くお金を受け取るのは問題無いのですが、普通に会社で働いている人たちはそのリスクをなかなか肌感覚として感じてくれないんですよね。」
竹川「適切なリターンというのは、日本でもあって然るべきですね。」
最後に、”おこす人”やそれを応援する人へのメッセージをいただき、トークセッションは締めくくられました。
今回は”光と影”という観点から、社会事業の本質に迫った非常にリアルなお話をして頂き、深く考えさせられるイベントとなりました。