ACTIVITY INTRODUCTION

活動紹介

ACTIVITY INTRODUCTION

活動紹介

〈イベントレポート〉[仙台ソーシャルイノベーション・ナイト×ARUNサステナブルビジネスシリーズ vol.3] 誰もが活躍する社会をイノベーションで築く

=
=

2016年より仙台市主催で開催されている「仙台ソーシャルイノベーションナイト」。今年度は途上国を中心に社会起業家を投資で支援するNPO法人ARUN Seedと連携し、「サステナブルビジネス・シリーズ」と題し、地域・社会課題・ソーシャルビジネスをキーワードに、全6回のシリーズで開催しております。

第3回目となる今回のテーマは「誰もが活躍する社会をイノベーションで築く」です。うつや発達障害の方のための就労支援事業「キズキビジネスカレッジ」を立上げられた、株式会社キズキ取締役の林田絵美さんをお迎えし、日本の労働人口が減少していくと言われている中で、誰もが活躍する機会を得ることができる社会の実現に向けた取組みについてお話しいただきました。その後のトークセッションでは、特定非営利活動法人ARUN Seed代表理事の功能聡子さんも加わり、共生社会の実現による地域活性化の可能性について、熱く議論していきました。

=
=

■登壇者


株式会社キズキ 取締役 林田絵美さん
=====

早稲田大学政治経済学部卒業後、PwCあらた有限責任監査法人へ入社。金融部門財務報告アドバイザリー部に所属し、大手金融グループにおける内部統制や国際会計基準のアドバイザリー・業務改善提案・東南アジア現地子会社における決算支援・組織再編PMO業務・監査・統合報告書リサーチ等に携わる。

キズキでは、うつや発達障害の方が会計・英語・マーケティング等を学び、キャリアを築くための「キズキビジネスカレッジ」、メンタルケアやスキルアップを通じてキャリアを拓くデジタルサービス「キズキクラウド」、障害者のマネジメントや戦力化を支援する企業様向けサービス「キズキHRサポート」を新規事業として立上げ。またデジタル戦略部を新規部門として立ち上げ、社内のDX化を推進する。

キズキコーポレートサイト:https://kizuki-corp.com/
キズキビジネスカレッジ:https://kbc.kizuki.or.jp/

=
=

■モデレーター


NPO法人ARUN Seed代表理事/ARUN合同会社代表 功能聡子さん
=====

国際基督教大学、ロンドン政治経済大学院卒。民間企業、アジア学院を経て1995年より10年間カンボジアに在住。NGO、JICA、世界銀行などの業務を通して、復興・開発支援に携わる。カンボジア人の社会起業家との出会いからソーシャル・ファイナンスに目を開かれ、その必要性と可能性を確信し2009年ARUNを設立。日本発のグローバルな社会的投資プラットフォーム構築を目指して活動している。

(主な表彰等実績)
SBIビジネスプランコンテスト優秀賞、エコジャパンカップ2010 環境ビジネスウィメン賞、第三回日経ソーシャルイニシアチブ大賞国際部門賞、国際基督教大学DAY賞(Distinguished Alumni Award)受賞。2016年 「Forbes Japan世界で闘う日本の女性55」に選出。「60分でわかる! SDGs 超入門」(2019年技術評論社)監修、「よくわかる開発学」(2022年ミネルヴァ書房)執筆。

(主な登壇等実績)
朝日新聞主催「SDGs著者に聞く」「イノベーション視点で考えるSDGsとアジア」登壇
日弁連主催「パンデミックとビジネスと人権」登壇
日本能率協会主催「経営革新塾」講師
J WAVE For Our Earth「今さら聞けないSDGsの基礎!」出演
JICA主催 課題別研修「日アフリカ・ビジネスウーマン交流セミナー:ファイナンスの新たな潮流・女性の金融アクセス課題の克服」講師
日本経済新聞社主催「日経ビジネスイノベーションフォーラム:社会的課題解決への多様なアプローチから見るソーシャルビジネス」登壇

=
=

■基調講演:誰もが活躍する社会をイノベーションで築く

はじめに、うつや発達障害の方のための就労支援事業「キズキビジネスカレッジ」を立上げられた、株式会社キズキ取締役の林田絵美さんより、『誰もが活躍する社会をイノベーションで築く』をテーマにお話いただきました。

=

林田さんのこれまでの歩み

現在は、株式会社キズキで取締役として経営や新規事業開発、DX推進に携わっている林田さんですが、キャリアのスタートは監査法人での公認会計士としての業務だったといいます。そんな林田さんがなぜ、うつや発達障害など様々な困難を抱えた方を支援する株式会社キズキに参画しようと思ったのか。その背景には、林田さん自身が発達障害の当事者だということがあります。社会人1年目に発達障害の診断を受け、発達障害と向き合いながらのキャリアのあり方を模索する中で“うつや発達障害に関わる事業をしたい”との想いを抱くように。そんな折、学生時代から関わっていたソーシャルビジネスでプロボノ活動を行う会計士コミュニティNPO法人Accountability for Changeのつながりがきっかけとなり、株式会社キズキと出会い社会人4年目の年に同社へ参画します。

=
=

株式会社キズキについて

株式会社キズキでは、『何度でもやり直せる社会を作る』ことをビジョンに、うつや発達障害など様々な困難を抱えた方を支援しています。学習支援事業、就労支援事業、公民連携事業、法人連携事業の大きく4つの事業を展開。

▷学習支援事業
不登校・中退等の困難を抱えた方の学び直しや受験支援を支援する個別指導塾や家庭教師事業

▷就労支援事業
うつや発達障害による離職者がスキルの習得や自己理解を経て再びキャリアを築くための就労支援事業

▷公民連携事業
全国30ヶ所の国・自治体から委託を受けて実施する就労支援や学習・生活支援事業

▷法人連携事業
障害者雇用を行う企業への研修・コンサルティング事業

そして、これらの事業を軸としながら、社内の体制づくりも進めてきたとのこと。バックオフィス改革として、業務管理システムや顧客データベースの構築などを通じたDXの推進。受益者である困難を抱えた方にサービスを届けるためのWebマーケティングを中心としたマーケティング戦略・体制の整備を進めてきました。

=
=

『就労支援事業 -キズキビジネスカレッジ-』について

2019年にスタートした『就労支援事業-キズキビジネスカレッジ-』。ここでは、うつや発達障害による離職者がスキルの習得や自己理解を経て再びキャリアを築くことの支援を行っています。

「発達障害者は、定型発達者と比べて何か特異な特徴を持っているわけではないということがポイントで、困難を抱えている点を特定し必要な対策や配慮を見つけることが出来れば、働くことができるんです。」と林田さん。

実際、一般的な障害者雇用が事務や単純作業に偏りがちである中、キズキビジネスカレッジの卒業生を見てみると、そのうちの約40%は障害者雇用ではなく一般雇用で就職をしているほか、約40%が大企業へ就職。職種もIT専門職が約30%、会計・経営管理が約10%などと多種多様な働き先・働き方でキャリアを築けています。

では具体的にどのような支援をしているのか。キズキビジネスカレッジでは単に就職先の紹介をするのではなく、就労目標に向けたプラン設計と継続したメンタリングや自分自身の特性を理解するための講座を提供するなど生活・メンタル面での支援を実施しています。また、自身の適性を見極めながらキャリアを築いていけるような多彩な学習プログラムを提供。さらには、学習プログラムを通じて習得したスキルを実際に活かすことができるよう外部企業と連携をした場づくりを行っています。

そして、支援者側の体制づくりにも力を入れているとのこと。属人的な支援に依ることが多い就労支援業界では属人的であることに良い面もありつつ、支援者変更や職業・職種の多角化への対応といった課題もあったとのこと。従来の人による支援とデータベースに基づく支援とを組み合わせることで、より最適な就職先のマッチングやフォローアップに繋げることができるようになってきたといいます。

また、現在は利用者の特性に合った学びや支援の内容をカスタマイズしていけるようなデジタルサービス『キズキクラウド』の開発を進めており、これまで通り人の力も大切にしながらもテクノロジーの力も織り交ぜることで新たな価値を生み出していきたいと今後の展望をお話いただきました。

=
=

■トークセッション:共生社会の実現による地域活性化の可能性

その後のトークセッションでは、特定非営利活動法人ARUN Seed代表理事の功能聡子さんも加わり、共生社会の実現による地域活性化の可能性について議論していきました。

=

データに基づく支援の背景と難しさ

属人的な支援に依ることが多い支援業界の中にあってデータに基づく支援体制を構築されてきた株式会社キズキ。データに基づく支援が進んできた背景と推進する中での難しさについて伺いました。

「私たちの行動規範の1つに“善意に基づく自己満足の支援をしない”というものがあるんです。つまり、支援者としての主観のみに頼った自己満足の判断ではなく、本当にその利用者にとって何が最適なのかを事実に基づきロジカルに考えないといけないのだという意識を社員1人1人が持っているのがベースとしてある。この組織文化が、データに基づく支援体制の構築を後押ししてきたのだと思います。」

「とはいえ、データというのは難しさもあって。第3者からみると気持ちの良いものではありますが、現場から見ると違和感を感じる場面もあるわけです。例えば、同じ不登校という分類をされる場合でも、家から1歩も外に出られない不登校の子もいれば、買い物や遊びにはいける不登校の子もいますよね。客観的な分かりやすさと事実との差をどう埋めていくのかということは難しい点です。そのデータを何のために使うのか。データの意味をしっかり見定めていくことが大切だと考えています。」

=
=

事業をデザインしていく上でのキモ

様々な新規事業を立ち上げて来られた林田さん。事業を企画・推進していく中で大切にしていることについて伺いました。

「1つは、キズキだからやるべきことは何かということです。自分達がやる意義についてはしっかり考えるようにしています。例えば、うつや発達障害のための就労支援事業のキズキビジネスカレッジの場合。就労支援事業を展開している会社は多数あったわけですが、キャリアを築きたいというニーズに応える就労支援をしているところは少なかった。ここに、キズキだからやる意義を感じ事業を立ち上げました。」

「もう1つは、徹底的なヒアリングをするということです。ステイクホルダーに対しては徹底的にヒアリングをするようにしていて、主観と想いだけで事業を立ち上げることはしないように気をつけています。」

=
=

―仙台・東北で、社会起業家として活動をされている株式会社meguruの高橋さん、株式会社マナライブの木村さんより同じ社会課題解決に向けて事業をする実践者としての立場から質問をしていただきました。

=
=

就労支援事業における支援期間と支援教材の実態

[高橋さん]
「“ICTとコミュニティで女性の人生を自由に!!”をビジョンに女性が精神的・経済的両面で自立できるようICTスキルを身につけることを支援する機会とコミュニティを提供する事業を行っています。私は女性を対象とした事業をやっているわけですが、林田さんが対象としているうつや発達障害の方たちというのも同じく、現在、社会に埋もれてしまっている人材であり、こうした方々の可能性を最大限発揮していただけるような支援をしているというという点では共通する部分も大いにあると感じながらお話をお聞きしていました。同じ支援者としての観点から、支援期間と支援教材の実態についてぜひお聞かせいただけたらと考えていました。よろしくお願いいたします。」

[林田さん]
「支援期間は、平均1年ほどです。早い方だと半年で就職される方もいます。支援の流れとしては、体調を安定させる&生活リズムを整える⇨キャリアのあり方を考える⇨就職活動というのが基本です。そして、就職して終わりではなく就職後のフォローもしっかりと行っています。また、スキル習得に向けた支援では、オンラインとオフライン双方でコンテンツを提供しています。こうした教材のほとんどは、オリジナルの教材を開発して提供する形をとっています。支援期間(支援内容)も支援教材も、利用者の実態やニーズに合わせた支援ができるようカスタマイズしながら提供しています。」

=
=

障害児者を育児する親の心理的ハードルを突破するためのPoint

[木村さん]
「私の起業のきっかけは息子が発達障害だったことでした。息子は小学1年生の時に診断されたのですが、周りを見てみると息子の他にも同じような子たちが沢山いたんです。発達障害児向けの放課後等デイサービスと学習塾、発達障害児の保護者向けの支援をしようと事業を始めたわけなんですが、これが失敗をしてしまいまして。その理由として東北には地域・社会の目を気にするという親の心理的な壁があったと感じています。子どもを通わせると発達障害であると内外に認めることになるというわけです。こうした親の心理的な壁をどのように乗り越えて来られたのでしょうか。ぜひ、お聞かせください。」

[林田さん]
「こちらは、キズキ共育塾のケースですが、この塾はA4サイズの看板しか出していないんですね。そして、集客という面でも近隣地域にチラシを撒いてということはしていなくて、Webが主となっています。木村さんが感じられた親の心理的な壁というのは東北に限らず、私たちが事業をしている関東・関西においても同じようにあると感じています。」

=

―最後に林田さんからメッセージをいただきました。

=

「私たちは、『何度でもやり直せる社会を作る』ことをビジョンに、うつや発達障害など様々な困難を抱えた方を支援しているわけですが、色々な形で連携・協働していけるような方々を探しています。ぜひとも社会課題解決に向けて一緒にチャレンジしてくださる方が増えていけば嬉しいなと思います。本日は、ありがとうございました。」

=
=

林田さんたちの取り組みが、きっと、誰もが活躍する社会を築いていくことにつながる。そう、強く感じた時間でした。

=

■今後のイベントについて

2016年より仙台市主催で開催されている「仙台ソーシャルイノベーションナイト」。この度、途上国を中心に社会起業家を投資で支援する特定非営利活動法人ARUN Seedと連携し、「サステナブルビジネス・シリーズ」と題し、「地域」、「社会課題」、「ソーシャルビジネス」をキーワードに、全6回のシリーズをお届けしております。今後開催する4〜6回目イベントについてご紹介します。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
#04 2023年01月31日(火)「ビジネスとサステナビリティ」
#05 2023年2月「社会的投資という新しい地平」
#06 2023年3月「SDGsビジネスはどこに向かうのか」
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

各イベント情報は随時公開していきますのでぜひご参加ください!

誰もが活躍する社会をイノベーションで築く"]