ACTIVITY INTRODUCTION

活動紹介

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活動紹介

2021.08.27

〈イベントレポート〉仙台ソーシャルイノベーション・ナイト 医療介護分野でのソーシャルイノベーション促進に向けて 〜仙台・東北で生まれる新しい医療・介護のカタチを探る〜

日本・世界で活躍する様々なジャンルの社会起業家をお呼びして実施するトークイベント「仙台ソーシャルイノベーションナイト(SSIN)」。今月のテーマは、『医療・介護』です。地方における医師不足、高齢化社会の中における介護のあり方など『医療・介護』分野にも様々な社会課題があります。今回のイベントでは、基調講演としてNHK朝の連続ドラマ小説「おかえりモネ」のモチーフともなった医師で医療法人社団やまと理事長の田上さんより想いの源泉やその取り組みを。その後のトークセッションでは、田上さんに加え、株式会社PEER代表で看護師の佐藤さん、マイムケア介護事業部長の林さんをお招きし、『医療・介護』の新たなカタチについて探っていきました。

■ゲスト

▷医療法人社団やまと理事長/医師 
田上佑輔 さん

熊本生まれ。鹿児島私立ラ・サール高校から東京大学理科Ⅲ類進学。卒業後は千葉県国保旭中央病院研修医を経て東京大学医学分付属病院腫瘍外科に入局。東日本大震災でのボランティア活動を機に2013年宮城県登米市と東京にてやまと在宅診療所創設。現在・医療法人社団やまと理事長(グループ:宮城、神奈川7診療所、訪問看護、リハ、栄養、居宅、カフェ、デイサービス)。宮城登米と関東を行き来し、診療以外にも地域住民や行政と関わり、登米市の地域包括ケア行政アドバイザーを務める。2017年10月から都市と地方を循環する医師働き方「やまとプロジェクト」を開始しNHK朝の連続ドラマ小説「おかえりモネ」のモチーフとなる。
(やまとプロジェクト:https://project.yamatoclinic.org/


▷株式会社PEER 代表取締役 
佐藤真琴 さん

静岡生まれ。社会人を経て入学した看護学校の実習で白血病の患者と出会い、がん患者のウイッグと地域ケアの必要性を知る。看護学校在学中に中国へ渡り、資金5万円でピア(個人事業)を起業。がん治療中もその人らしく生きられる地域づくりを目指す。静岡大学大学院工学研究科事業開発マネジメント専攻修了/看護師。
(株式会社PEER: https://team-peer.com


▷マイムケア介護事業部長 
林久美 さん

介護事業を手がける旦那さんとの結婚を機に介護業界に参画。認知症に対する社会の偏見、安全であることに注意を払い過ぎ、利用者の承認欲求・社会的欲求を満たせていなかったこれまでの介護のあり方に疑問を感じ、2018年に小規模多機能型居宅介護施設と駄菓子屋のある地域交流スペース(マイムテラス)を併設した「マイムケア長町」を長町商店街内に開設。「Slow Communications」をスローガンに掲げ、『お世話しない介護』『利用者の活躍の場づくり』『地域とのゆるいつながり』を実践。SIA2018、東北ソーシャルイノベーション大賞、共感賞を受賞。
(マイムケア:http://maimucare.com
(マイムテラス(マイムケア長町):http://maimucare.com/free/nagamachi

■基調講演:“地域医療”と社会起業

NHK朝の連続ドラマ小説「おかえりモネ」のモチーフともなっている医療法人社団やまと理事長田上さんによる基調講演では「”地域医療”と社会起業」との標題のもと、想いの源泉、医療法人社団やまとのこれまでとこれからについてお話しをいただきました。

“登米”に来た理由
30歳までは関東にて外科医としてのキャリアを歩まれてきた田上さん。当時は東北で働くことや自分で事業を立ち上げることは全く考えたことはなかったといいます。30歳を過ぎ、
外科医という立場に囚われることなく人の役に立てる方法はないかと考えるようになる中、
東日本大震災が発災。ボランティアとして被災地での活動を通じ、「地域医療」に係る課題(高齢化社会・健康寿命低・慢性的な医師不足など)を意識するようになり、平日は東京で外科医、休日は“登米市”での活動という日々を送るようになります。そして、震災から2年後の2013年、『医療をキッカケに地域を変える』との想いから、“登米市”に診療所を開設する決断をします。

『医療法人社団やまと』の歩みと、“医療介護領域”のこれから
そんな想いを持って設立された『医療法人社団やまと』では、地方部の医師不足という課題に対し、医師のタスクシフト・シェアの推進などを通じ持続可能な形での都市⇆地方の医療循環モデルの構築を進めてきました。そして、その活動領域は、「スタッフも“よし”、組織も“よし”、そして地域も“よし”という近江商人の三方よしの感覚を持ち活動をしてきました」と、田上さんが言うように単一組織内にとどまりません。行政や各種地域内組織と連携をとり、登米市地域医療見学プログラム、病院と家を往復する癌患者のためのサードプレイス、地域に出るこれからの薬剤師教育プログラムなどなど強みである“医療”の知見を活かした活動もされているとのこと。このような連携を通じた「地域医療の価値共有」が新たな価値の創出につながっていると言います。

そして、講演最後のメッセージは、『自分のストーリー(志)が社会を変える』
「知識学歴がある人だけがチャレンジできるではなく、1人1人が地域の困りごとに対して立ち上がることができ、そうしたストーリーが増えていくことが、地域を、社会を、よりよくしていくことにつながる。」と話す田上さん。まずは小さな1歩から。これから1歩を踏み出そうとしている方にとって力強い後押しとなったのではないでしょうか。

■トークセッション:仙台・東北で生まれる新しい医療・介護のカタチを探る

医療法人社団やまと理事長田上さんに加え、株式会社PEER代表で看護師の佐藤さん、マイムケア介護事業部長の林さんをお招きし、『医療・介護』の新たなカタチについて探っていきました。

“組織”で、“地域”で。〜カルチャーを創る・広げる〜
活動拠点や取り組み内容は異なるものの『医療・介護』分野という共通項のあるお三方。活動を行う中での重要な要素として皆さん、“組織内でのカルチャーづくり”を挙げておられました。

【林さん】
「1から新しい介護をしたいという想いがあったので、あまり介護経験がない方を採用したというところがあります。1人の人として目上の方・年上の方と関わるという姿勢が介護の知識よりも大切なのかなと。」

【佐藤さん】
「私たちの会社は美容師さんなのでもちろん技術も必要ではありますが、それに加えて、きちんと話を聴くとか、嘘をつかないとかという当たり前の部分。そして、相手に寄り添う・人が好きという部分がすごく大事と思います。」

【田上さん】
「特に若い先生たちはカルチャーに共感して入ってきてくれるケースが結構あるのかなと。
みんなで地域をよくしていこうよというカルチャーの醸成に向けた話はしてきていますし。」

『医療・介護』というと専門技術が大切と一般論としては考えてしまいがちですが、社会課題解決に取り組むことをvisionに掲げて動く組織であるからこそ、お金や名誉ではなく『想い』の共有・共感を通じ組織内カルチャーを創りあげていくことが大切だということなのかもしれません。

『医療・介護』分野で事業を進めていくことの難しさとは?
今回、事前の参加者アンケートで参加理由として最も多かったのが、「テーマ(=医療・介護分野)に関心がある」だったとのこと。経営者として、プレイヤーとして『医療・介護』分野で活動をされてきたお三方だからこそ分かる『医療・介護』分野で事業を進めていく上での難しさを語っていただきました。

「ファイナンスの難しさ」「短期間で解決するものが少ない」「業界に対するイメージの問題」など様々な発言がある中、お三方に共通していたのは、「課題が複雑で答えが簡単には見えてこないため課題設定が難しい」ということでした。そうした課題があるからこそ「やってみてダメならダメでまたやる」「本当にその取り組みが受益者に喜んでもらえるか試す場が大切」(佐藤さん)というように頭で考えるだけでなく実際に現場に出て何度もPDCAを回していくことが重要ということでした。

『社会起業』『医療・介護分野』でチャレンジしていきたい方に向けてのメッセージ

【佐藤さん】
「医療介護分野には本当に困っている方がいらっしゃいます。どんなに小さなことでもいいのでチャレンジしようと考えている方はぜひ参加していただけたらと。自分自身も社会起業塾に参加してきましたが、自分の思っていることやってきたことを話しフィードバックをいただいた経験はとても良かったです。ワクワク感・達成感を一緒に味わって行けたらと思います。まずはエントリーしてみてください!違う世界の扉が開けられちゃうかもしれません。」

【林さん】
「SIAプログラムへ応募した時は、自分なんかが参加してしまっていいものなのかと迷いに迷いましたがチャレンジすることにしました。参加してみて一番よかったことは今にも繋がる仲間ができたことなのかなと。1歩踏み出したからこそ今があると私自身実感しています。」

【田上さん】
「東北こそ社会起業のチャンスだと思っています。本当に多くの課題があります。そして、一緒に課題解決に取り組もうとチャレンジしている仲間がいます。何か社会のために、誰かのために役に立ちたいという人にとってSIAプログラムはとても良いプログラムだと思っています。」

東北は課題先進地域です。『医療・介護分野』の他にも多くの社会課題が顕在化しています。まずは、小さな1歩でも。ぜひ、チャレンジしてみませんか。