ACTIVITY INTRODUCTION

活動紹介

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活動紹介

2022.03.29

〈イベントレポート〉仙台ソーシャルイノベーション・ナイト 新しい企業の形「ゼブラ企業」について ~ よりよい社会の創造と企業成長の両立 ~

日本・世界で活躍する様々なジャンルの社会起業家をお呼びして実施するトークイベント「仙台ソーシャルイノベーションナイト(SSIN)」。今月のテーマは、『ゼブラ企業』です。『ゼブラ企業』とは、2017年にアメリカの女性起業家らが提唱した概念で、成長性の高いベンチャー企業(企業評価額が10億ドル以上で、設立10年以内の非上場ベンチャー企業)を意味する『ユニコーン企業』に対するアンチテーゼとして誕生しました。自社の成長を第一の優先順位とするのではなく、より良い社会の形成に寄与することを第一とし、持続可能な範囲での成長を追求している企業を表す言葉として使われています。

東北地方では震災を契機に、「お金のため」「自分のため」ではなく、「地域のため」「みんなのため」にチャレンジを行う起業家や経営者が増えてきており、これは、『ゼブラ企業』とも親和性のある潮流と言えます。今回のイベントでは、ゼブラ企業をさまざまな形でサポートする株式会社 Zebras and Company の田淵さんをお招きし『ゼブラ企業』の概念や社会潮流、支援のカタチについてお話を伺いました。

また、その後のトークセッションでは、田淵さんに加え、社会課題解決を目指すオンラインマッチング・プラットフォームの構築を進めている、ICHI COMMONS株式会社の伏見さんをお招きし、「新しい企業の形『ゼブラ企業』と新しい資金調達について」とのテーマにてディスカッションを行いました。

■ゲスト

株式会社Zebras and Company 共同創業者・代表取締役、一般社団法人東京ゼブラズ・ユナイト共同創設者・代表理事/淵良敬さん

日商岩井株式会社(現双日株式会社)を退職後、LGT Venture Philanthropy(リヒテンシュタイン公爵家によって設立されたインパクト投資機関)、ソーシャル・インベストメント・パートナーズ、SIIFなどで国内外のインパクト投資に従事。グローバルな経験・産学ネットワークから世界的な潮流目線での事業のコンセプト化、経営支援、海外パートナー組成を得意とする。2021年3月にZebras and Companyを共同創業。同志社大学卒、IESE Business SchoolでMBA取得。Tokyo Zebras Unite 共同創設者、Cartier Women’s Initiative東アジア地区審査員長。Impact Collective審査員・メンター。

ICHI COMMONS 株式会社 代表取締役/伏見崇宏さん

シンガポール生まれ、アメリカ南部アラバマ州で幼少期を過ごし、12歳の時に日本に帰国。慶應義塾大学在学中に教育系NPO HLABの立ち上げに携わり、卒業後はゼネラル・エレクトリックに入社。同社CFO育成プログラムで東京や新潟の工場にて各事業部のプロジェクトを推進。その後、社会的投資の中間支援をする一般社団法人C4に転職し、社会的事業(営利・非営利含む)の伴走支援や社会的インパクトを軸に置いた資金調達手段の開発に取り組む。同時に日本の上場企業に投資をする米系ファンドにてアレンジャー業務に従事。国、産業、セクターを横断した経験を活かし持続可能な社会の仕組みを創りたいと、2020年1月に ICHI COMMONS を創業。

 

■ゲストトーク:新しい企業の形『ゼブラ企業』とは?〜株式会社Zebras and Company

 

はじめに、株式会社Zebras and Companyの淵さんより、『ゼブラ企業』の概念及び社会的な潮流、同社での支援の取り組みについてお話をいただきました。

田淵さんのこれまでの歩み

大学を卒業後、総合商社にてキャリアをスタートさせた田淵さん。未上場企業などへ社会的インパクトを考え投資を行うインパクト投資に関心を持ちキャリアチェンジ。国内外のインパクト投資機関にて投資や経営支援の活動をされてきました。

 

当時、事業成長による規模拡大をインパクトと捉える考え方が主流であったインパクト投資。しかし、投資の受け手となる企業側は、単に規模拡大を目指すところだけではなく、ステイクホルダーへのインパクトを目指すところがあるなど需要と供給の間のギャップと需要の多様化の流れを感じたといいます。この課題感に対し、共通の想いを持つ2人の共同創業者と共に2021年に株式会社Zebras and Companyを設立されました。

「ゼブラ企業」とは?

株式会社Zebras and Companyの社名の由来には、『ゼブラ企業』という言葉(概念)があります。『ゼブラ企業』とはどういった背景から誕生した言葉なのでしょうか。

『ゼブラ企業』の反対にある言葉として、2013年にシリコンバレーのベンチャーキャピタリストがつくった「ユニコーン企業」があります。“評価額が1,000億円を超える未上場企業”を指すこの言葉は、短期・独占・株主至上主義といった現在の資本主義の負の側面を象徴しているとの見方もあります。『ゼブラ企業』は、こうした風潮に危機感を覚えた米国の4人の女性起業家が2017年に提唱した言葉で、自社の成長を第一の優先順位とするのではなく、より良い社会の形成に寄与することを第一とし、持続可能な範囲での成長を追求している企業を表す言葉として使われています。

そして、『ゼブラ企業』を提唱した4人が立ち上げた組織であるZebras Uniteは、現在、世界中で30近い支部、20,000人以上のメンバーが関わり、全世界的に大きなムーブメントとなってきているといいます。

株式会社Zebras and Companyの取り組みと目指す社会

株式会社Zebras and Companyでは、“優しく健やかで楽しい社会”の実現をvisionに掲げ、4つのStepを設け事業を展開しているといいます。

 

▶︎Step1:ムーブメント・コミュニティづくりとしてのイベント開催やBlog執筆などを通

じた啓蒙事業。(一般社団法人東京ゼブラズ・ユナイトでの事業)

▶︎Step2:社会への実装に向けての投資経営資源の実例づくりとゼブラ経営の理論化。

▶︎Step3:『ゼブラ企業』及びサポーターの増加と資金供給先の増加。

▶︎Step4:『優しく健やかで楽しい社会』へ。

 

そして、現在は、投資事業、経営支援事業、FINANCE FOR PURPOSE、ムーブメント・コミュニティづくりの大きく4つの事業を展開。vision実現に向けた歩みを着実に進めているとのこと。

■トークセッション:新しい企業の形『ゼブラ企業』と新しい資金調達について

 

続いて行われたトークセッションでは、ICHI COMMONS株式会社の伏見さんを加え、はじめに伏見さんより活動紹介をいただいたのち、「新しい企業の形『ゼブラ企業』と新しい資金調達について」とのテーマのもとディスカッションを行いました。

まず、最初に、もうお一方のゲストであるICHI COMMONS株式会社の伏見さんより自己紹介&事業紹介をいただきました。

伏見さんのこれまでの歩み&ICHI COMMONS株式会社の取り組み

幼少期はシンガポールやアメリカで生活をしていたという伏見さん。大学卒業後、国内外において様々なソーシャル領域の企業・団体にて活動する中で、誰が・どこで・どういった課題に対して活動しているのかが見えてこず、セクターによって分断が起きているといった資本主義社会の難しさに直面。この課題を解決するべく、2020年ICHI COMMONS株式会社を設立し、社会課題の解決を目指すパートナーに出会えるマッチング・プラットフォーム「ICHI. SOCIAL」を展開します。企業寄付先を従業員の投票によって決める「わくわく寄付コンペ」や「企業版ふるさと納税」を通じ、企業と社会課題解決に取り組む組織(=SPO)と個人の3者を繋ぎ、巻き込み、社会課題解決を推進していく仕組みの構築を目指しているといいます。

続いて、新しい企業の形『ゼブラ企業』と新しい資金調達について、弊社竹川がモデレーターとして入り、トークセッションを進めていきました。

 

(株式)会社とは?/市場のあり方とは?

株式会社をはじめとする会社という存在は、そもそもソーシャルから端を発してきたのではないか?なぜ、今、『ゼブラ企業』という概念を作らなくてはいけなくなってきているのか?この疑問について、金融業界・海外動向・ソーシャル領域など様々な知見をお持ちのゲストのお二人に伺いました。

 

【田淵さん】

「確かに、会社というものは元々短期で儲けようというのではなく、もっと長期的な視点があったと思うんです。1つ感じているのは、「株式の流通市場の発達」の影響です。どこかの段階で手段と目的が食い違うようになってきたのかと。つまり、元々は会社の成長のためを目的に考えられていた資本が、株式売買によって儲けるためのものとして捉えられるようになりこれが目的化してきているのではないかと感じています。」

 

【伏見さん】

「資本市場・株式市場において手段と目的が食い違ってしまっているというのはその通りだと思います。どうしても評価をするとなるとお金儲けができているか・いないかということがわかりやすいですものね。資本市場はそうなるものなのだと理解しています。ただ、それが行き過ぎているのが現状で、『ゼブラ企業』や社会起業家の存在が出てきているということは、リバランシングが世界中で起きはじめているというところではないでしょうか。」

 

「ゼブラ企業」のあるべき姿(正解)とは?

資本市場においてリバランシングが起きてきており、それを表す1つに『ゼブラ企業』の存在があるといいます。では、『ゼブラ企業』のあるべき姿(正解)とはどのように定義されるべきなのでしょうか。

 

【田淵さん】

「正解は1つではないと考えています。その中で「多様性」がキーワードだと思います。売上の最大化を目指すということは分かりやすい成功の定義ですが、『ゼブラ企業』の場合は、成功の定義を自分たちでステイクホルダーの共感も得られる形で見出していくということなのだと。この成功の定義を経営者の方と一緒になって考えていくお手伝いをしているのが弊社の取り組みの1つでもあります。」

 

「ゼブラ企業」を支援するため行政ができること

参加者の方からは、『ゼブラ企業』を支援していくために行政ができることについて質問が。民間の側からソーシャル支援をされてきたお二人にお答えいただきました。

 

【伏見さん】

「行政の方々には、「最強のコミュニティコーディネーター」になっていただきたいと考えています。属性の異なる様々な人・団体に対して広くアプローチできるということが行政の強みだと感じていまして、属性の異なる様々な人・団体の声を拾い打つべき手を考え動いていただきたいです。課題解決をしたい団体に情報提供を行うですとか、エコシステムを構築するための0→1支援ですとか、はたまた、法律の改定とか。」

 

【田淵さん】

「大きく2つあります。1つは、法律・政策など行政側においてもムーブメントを起こし

ていくということです。弊社は共同創業者に官庁出身者がいることもあり行政側とコ

ミュニケーションをとりながら取り組みを進めている部分もあります。もう1つは、お金の面です。事業のブースターとなりうるお金の提供というところでも期待しています。」

 

おわりに

最後に、これから『ゼブラ企業』を目指す方やチャレンジをしていきたいと考えている方に向けてのメッセージをいただきました。

 

【伏見さん】

「自分自身がワクワクして取り組んでいくこと。そして、アクションをしていくこと。これが大事なことだと考えています。私自身ももちろん寝られない夜もありますが、ワクワクと失敗も学びだというマインドを持ち頑張っています。ぜひ、一緒に活動して行ければと思います。ありがとうございました。」

 

【田淵さん】

「世の中には色々なバイアスがあると感じています。とはいえ、世の中には様々なオプション・選択肢があるとも思っていまして、私たちの活動の1つのキーワードに「人の意識変容」を掲げています。「人の意識変容」を起こしていければ社会は変わっていくのだと思っています。ぜひ、色々なオプション・選択肢があるのだと頭に入れて動いていただけたらと思いますし、その際に、弊社としてお手伝いできることがあればお声がけいただけたらと思います。ありがとうございました。」

 

1人1人の意識が変われば社会は変わっていく。『ゼブラ企業』をはじめ社会をよりよくしていくための選択を1人1人がしていくことが大切なのだと考えさせられる時間でした。