2022年7月31日から8月21日の4日間に高校生社会課題探究ゼミが開催されました。
このたび、こちらのイベント内容をまとめましたので、雰囲気を感じて頂ければ幸いです。
2022年7月31日(日)
いまだに猛威を振るうコロナウイルス感染拡大が懸念されましたが、感染症対策を行い、今年度も対面での開催をすることが出来ました。
今回は14名の高校生のみなさんが参加してくれました。
ここで、高校生社会課題探究ゼミについて、概要をご説明します。
1)イベントの名称
高校生社会課題探究ゼミ
~デザイン思考を活用して課題を解決。東北の活性化につなげよう~
2)イベントの趣旨
高校生を対象に、社会起業家との協働作業を通して、東北の活性化につながる社会課題を探究していくゼミ講座です。「デザイン思考」のアプローチを活用し、社会起業家の想いに触れ、「課題の本質に迫る調査」「課題発見」「アイディア出し」「プロトタイプ」「テスト」という5つのプロセスを通じ、地元の社会課題解決を図るための探究型学習を実践します。
3)イベントの概要
主 催:仙台市
運 営:一般社団法人IMPACT Foundation Japan (INTILAQ東北イノベーションセンター)
後 援:
東北経済産業局、仙台スタートアップ・エコシステム推進協議会、仙台市教育委員会、日本政策金融公庫、全国高校生マイプロジェクト実行委員会、NPO法人まなびのたねネットワーク
日 程:
DAY1 2022年7月31日(日)13:00-17:00
DAY2 2022年8月11日(日)13:00-17:00
DAY3 2022年8月14日(日)13:00-17:00
DAY4 2022年8月21日(日)13:00-17:00
会 場:INTILAQ東北イノベーションセンター(仙台市若林区卸町2-9-1)
参加費:無料
講師・ファシリテーターほか:
■メインファシリテーター
佐々木 大(INTILAQ東北イノベーションセンター)
■サブファシリテーター
伊藤 真結(SIA2019,AKIU SCHOLĒ)
■グループメンター
伊藤 真結(SIA2019,AKIU SCHOLĒ)
木村 一也(SIA2017, あわえ)
山田 毅(SIA2018,プロスクロス)
■コーディネーター
高野 圭子(INTILAQ東北イノベーションセンター)
4)行事のプログラム
【DAY1】
INTRODUCTION&EMPATHIZE(デザイン思考における「共感」)
●イントロダクション(このゼミが目指すゴールについて)
●社会課題解決に本気で取り組む先輩起業家のプレゼンテーション&ディスカッション
●各自が本気で取り組んでみたいテーマに基づくグループ編成
【DAY2】
DEFINE (デザイン思考における「課題定義」)
●「デザイン思考」について学んでみよう
●グループワーク「お互いの関心テーマを掘り下げてみよう」
●フィールドワークについての説明
【DAY3】
IDEATION&PROTTYPE(デザイン思考における「アイディア創出」~「プロトタイプ」)
●課題の解決策は1つではない。あらゆる角度から斬新なアイディアを徹底的に考えてみる。
●「共感」を意識した事業プランに落とし込み、形にしてみる。
【DAY4】
PRESENTATION(デザイン思考における「テスト&フィードバック」)
●参加高校生による最終発表会、及びゲスト審査員による結果発表&講評
●参加者交流会
高校生は6人の3チームに分かれ、各チームにメンターがつきます。
メンターはチームの一員ですが、生徒たちが主体的に課題を発見し、解決策を考えていけるようサポートします。決して手を出し過ぎることなく、あくまでも生徒たちが自ら課題意識をもった事柄について自分事として取り組んでいけるよう見守る役割をします。
<DAY1 INTRODUCTION>
[日 時] 7月31日(日)13:00-17:00
[内 容]
・イントロダクション & アイスブレーキング・自己紹介等
・社会起業家プレゼンテーション
・グループ編成説明
・フリートークセッション
・取り組むテーマを決める、デザイン思考について学ぶ
・グループディスカッション
・振り返りと次回への抱負、感想(一人一言)
[レポート]
初対面で、生徒たちも緊張する中、アイスブレイクで緊張をほぐし、その後講師であるINTILAQ東北イノベーションセンター センター長 佐々木より挨拶、後援者である仙台市担当者挨拶の後、参加高校生の自己紹介を行いました。
社会課題に取り組む起業家プレゼンテーションでは、3名の起業家から各15分程のプレゼンテーションがありました。テーマは、教育から福祉の問題、地域の問題まで様々です。
スタディクエスチョンが書かれたプリントが参加高校生に事前に配布され、メモを取りながら起業家の話に耳を傾けていました。
その後のフリートークセッションでは、各起業家のテーブルを回り、その課題についての質問や疑問を投げかけました。「自分の知識が浅すぎた」「新しい学びを多く得ることができた」等、高校生にとっても身近な社会課題に取り組む起業家の話を聞き、参加した高校生なりに色々なことを感じたようでした。
フリートークセッションを元にグループ編成をし、グループ毎の活動が始まると、リーダー決めや日程決めをしました。リーダー決め等はスムーズに決まりましたが、「もう少し話し合う時間が欲しい」等の意見もあり、課題に対してお互いに話す時間が足りないと感じた高校生もいました。
最後まで緊張していた様子もありましたが、グループメンターや初対面の高校生とのディスカッションを通して、自分や社会のことを知る時間をとることができました。
<DAY2 EMPATHIZE & DEFINE(デザイン思考における「共感」~「課題定義」)>
[日 時] 8月11日(水・祝)13:00-17:00
[内 容]
・チェックイン
・自分を掘り下げ見つめ直すワーク
・本質を探る問いを立てる
・探究課題の本質的な課題に迫る(ヒアリング)
・社会課題を定義する
・チェックアウト
・まとめ
[レポート]
1日目からの間にグループ毎にディスカッションを重ねたチーム、そうでないチームで様々な中、2日目のプログラムが始まりました。しかしながら、どのグループもまだ関係性が出来ていない様子で、初日と同様、チェックイン時も静かな雰囲気の中でのスタートでした。
そんな雰囲気の中でしたが、自分を掘り下げ見つめ直すワークでは、各自とても真剣に取り組み、またお互いに問いを投げかける場面でも、ありきたりな問いではなく、真剣に相手の発表を聞いていたからこそ出てくる問いが生まれていました。グループによっては、辛い過去の経験に踏む混む場面もありましたが、話す側も聴く側も、とにかく真剣にワークに取り組む姿勢が見られました。なかなか自己開示が出来ない様子の生徒たちでしたが、このワークを通してお互いについて理解を深め、また、「なぜ自分はこのグループに来たのか」をお互いに言葉にすることで、取り組む社会課題探究への意欲を高められていたように思います。
本質を探る問いを立てるワークから、本質的な課題に迫る為のヒアリングの時間では、グループ毎に全く違う時間を過ごせていました。
あるグループは、オンラインでみっちりヒアリングをし、あるグループは、自分を掘り下げるワークを更に掘り下げながら、自分たちが向き合う社会課題への理解を深めていました。
高校生ならではの視点で、現代社会について多様な意見が飛び交い、議論は白熱しました。当日見学に来ていた現職の高校の先生方やスタッフ陣が、高校生の議論に聞き入る場面もありました。
社会課題の解決に向かう為には、「本質的な課題に迫る」ことが最も重要であり、本プログラムでもそれは同様です。本質的な課題を探っていく2日目は、参加高校生から、「ヒアリング出来て良かった」「刺激になった」という意見があった一方で、「難しかった」と、課題の本質に迫ることの大変さを感じた生徒たちも多かったようです。
<DAY3 IDEATION&PROTTYPE(デザイン思考における「アイディア創出」~「プロトタイプ」)>
[日 時] 8月14日(日)13:00-17:00
[内 容]
・チェックイン
・アイディア出し
・プロトタイプの説明
・プロトタイプ&プレゼン準備
・チェックアウト
[レポート]
3日目のプログラムは、いよいよアイディア出しです。各グループで、1日目から2日目にかけて、課題の定義を行ってきました。3日目も、最初の30分程で課題の定義のディスカッションを行い、各グループで、改めて定義した課題を発表しました。それぞれ、2日目の最後の段階からは更にブラッシュアップされ、本質的な課題に近づいたようでした。
次に、定義した課題を解決するためのアイディア出しです。アイディア出しについては、思い付いたアイディアを口に出しながら付箋に書き出していきました。否定しない、というルールの下で、安心しながら、どんどんアイディア出しを行っていました。高校生ならではの斬新で楽しいアイディアが沢山出され、どのチームも盛り上がっていたように見えました。
アイディア出しをした後、沢山出たアイディアを、革新性、実現可能性、有用性の3つにグループ分けを行い、出されたアイディアの新結合を考えました。アイディアを出す段階では、「本当に実現できるのか」という不安もあったようですが、ディスカッションを重ねていく中で、「高校生にも出来ることはある!」と感じながらデザイン思考ワークショップに取り組んでいるようでした。
いよいよ次回は最終発表です。この1週間は、直接会うことは出来ないことや、学校によっては新学期が始まる為予定を合わせるのも大変な様子でしたが、参加した高校生の底力が発揮されるのが楽しみに感じられる3日目のチェックアウトでした。
< DAY4 PRESENTATION(デザイン思考における「テスト&フィードバック」)>
[日 時] 8月21日(日)13:00-17:00
[内 容]
・チェックイン
・発表準備・練習
・審査員紹介
・最終発表&質疑応答(12分×3グループ)
・結果発表(5分)
・ゲスト審査員講評
・振り返り
・記念撮影・一次解散
・参加者交流会
[レポート]
いよいよ最終日、最終発表です。プログラム自体は、3日目までと同様、13:00スタートでしたが、どのチームも、開始の1時間~2時間前に集まり、最終発表へ向けた最後の打ち合わせやスライドの調整などをしました。
プログラム開始後、今日の意気込み等を共有すると、連日ZOOMを使って発表の打ち合わせや練習をしたグループもあり、各グループ意気込みばっちりの様子でした。
そして、いよいよ発表本番。発表会場となる階段教室に移動し、まず今回審査員としてご協力いただいた東北経済産業局、日本金融公庫、NPOカタリバ、NPOまなびのたねネットワークの皆様から、お話を頂きました。生徒たちは発表の緊張もある中で、メモを取り頷きながら真剣に聞く姿も見られました。
今回、生徒たちが取り組んだ社会課題の主なテーマは、「少子化・子育て問題」「ホームレス支援」「若者の悩み相談の現状」というものでした。
それぞれのチームで、当事者や、そのテーマについて実際に取り組んでいる方へ直接ヒアリングした結果をまとめたり、公的なデータを読み取ることで、本質的な課題がどこにあるのか?を探究してきたプロセスが発表されました。また、本プログラムでは、そういった課題に対して、どのように解決していくのかについてもデザイン思考を利用しディスカッションを重ねてきました。高校生ならではの、独創性のあるアイディアで解決策を提案したグループもあれば、収支計画を金額まで細かく計算したグループ、ビジネスモデルを提案したグループもありました。どのグループも、ただ「楽しい」だけのアイディアではなく、困っている人たちを持続可能な形で支援するにはどうしたらいいのかを、短い期間でもしっかり向き合ってきた結果が、発表に込められていました。
緊張はしていたようですが、どのグループも、練習した分、堂々とプレゼンテーションができていました。
審査結果発表は、課題定義、独創性、社会貢献、実現可能性、表現力の5観点を各5点で審査員の方に審査頂き、100点満点での審査をしました。結果は以下のようになり、どのグループも、練習の成果が発揮されていたようです。点数の低い項目については、審査結果発表と講評を頂いたすぐあとにグループで振り返りをし、グループの良かった点と改善点についてお互いにフィードバックを行いました。
最後に、すべての日程を振り返り、それぞれが学んだことや、今後に活かしたいことを参加高校生全員に発表してもらいました。中でも多かったのは、「課題定義が難しかった」ことで、取り組む社会課題は違っても、どういったことが原因となり、社会問題が生まれているのか、その本質的な課題を探究していくことの難しさや面白さを感じてくれていたようです。また、デザイン思考の学びや、違う学校の高校生との交流の中で、「普段の学校生活では得られない経験が出来た」と語ってくれた高校生も多く居ました。
記念撮影をし、プログラム終了後は、早速今後のアクションへ向けて審査員の方に改めてフィードバックをもらいに行ったり、チームで仲良く写真を撮る姿が見られました。
約1か月間、そして実際に会うのは4日間だけという短期のプログラムですが、プログラムを通して、学年も学校も違う高校生が集まり、社会に目を向けることで、今年も参加高校生がたくましく変容していく姿を見ることが出来ました。
若い年齢から起業家マインドを学んだ子どもたちが将来の東北、日本を代表する起業家になってくれることを願っています。
INTILAQにお越しいただきました、参加者の皆様、ご協力いただいた皆様、ありがとうございました。
参加者だけでなく運営側にとっても学びの多い、素晴らしいワークショップとなりました。