ACTIVITY INTRODUCTION

活動紹介

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活動紹介

2021.11.29

〈イベントレポート〉仙台ソーシャルイノベーションナイト『野遊び』から広がる本気の地方活性化 〜楽しみながら地方の本当の価値を見つけ、活かす仕掛けづくり〜

 

『野遊び』から広がる本気の地方活性化

〜楽しみながら地方の本当の価値を見つけ、活かす仕掛けづくり

日本・世界で活躍する様々なジャンルの社会起業家をお呼びして実施するトークイベント「仙台ソーシャルイノベーションナイト(SSIN)」。今月のテーマは、「『野遊び』から広がる本気の地方活性化」です。世界でも稀な豊かな自然と四季がある島国・日本で、時代を超えてその自然に戯れ遊んできた日本の文化であり、生き方である、『野遊び』。本イベントでは、基調講演として株式会社スノーピーク地方創生コンサルティング代表取締役会長/一般社団法人野遊びリーグ理事長の後藤さんをお迎えし、『野遊び』に係る活動や事例を。後半は、福島県西会津町で「ゲストハウスひととき」を営む佐々木さんと、宮城県丸森町でフィンランドサウナ施設「MARUMORI-SAUNA」を営む本多さんのお二人も交えながら、東北での『野遊び』の可能性について、探って行きました。

■メインゲスト

▷株式会社スノーピーク地方創生コンサルティング 代表取締役会長 / 一般社団法人野遊びリーグ 理事長 後藤健市さん

1959年、北海道帯広市生まれ。米国の大学留学時に、日本の家電メーカーのセールスプロモーション会社を経て、1986 年に地元に戻り全盲の祖父が創設した社会福祉法人ほくてんに入社し、視覚障害者情報提供のIT化に携わるほか、福祉の心を育てることを目的とする教育事業を全国で展開。同時に、地域内外でのまちづくり活動に積極的に参画し、地方創生の新たな事業を実現することを仕掛ける会社や団体を設立し、場所の価値を活かした企画と実践、講演や人材育成、仕組みづくりに広く尽力。現在は、これまでの経験とネットワークを活かし、株式会社スノーピークの地方創生担当として、地域にある豊かな自然資源や風景、環境、食などを『野遊び』で楽しみながら取り組む事業と、“Noasobi”をグローカル展開することに取り組んでいる。

■ゲスト

▷ゲストハウスひととき オーナー 佐々木祐子さん

1987年、福島県郡山市生まれ。2018年に人口6000人の福島県西会津町に「ゲストハウスひととき」を開業。ゲストに向けて、西会津町の素朴な自然に音楽やサウナを掛け合わせた体験ツアーを実施。2019年からは冬期の観光資源が乏しい同町にてテントサウナと雪ダイブを楽しめるイベント「SNOW SAUNA」立ち上げる(現在、コロナで活動休止中)。2021年には「一箱本棚オーナー制度」を活用した私設図書館とシェアオフィスからなるワークプレイス「いとなみ」をオープン。ローカルを舞台にチャレンジショップやインターン制度を活用しながら、「一人ひとりのやってみたい」を形にするサポートを行い、一人ひとりが自信をもって暮らせる社会の実現を目指している。東北社会起業家育成プログラム(SIA)四期生。

MARUMORI-SAUNA株式会社 代表取締役 本多智訓さん

早稲田大学法学部卒業。早稲田大学大学院経営管理研究科 経営管理修士(MBA)取得。東京海上火災保険(株)で地域営業・企業営業を経験。 2012年3月から東北地域の起業家支援に携わる。東北で挑戦する人を増やすためには、「挑戦しましょう」ではなく、 「楽しいから一緒にやりましょう」という声かけが必要だと痛感し、2017年11月にMARUMORI-SAUNA株式会社を創業。現在は同社にて東北の自然価値を削り出す、自然産業化に携わりながら、一般社団法人IMAPACT Foundation Japanにて、社会課題を持続的に解決する仕組みを構築している。


■基調講演:『野遊び』から広がる本気の地方活性化

株式会社スノーピーク地方創生コンサルティング代表取締役会長/一般社団法人野遊びリーグ理事長の後藤さんによる基調講演では「『野遊び』から広がる本気の地方活性化」との標題のもと、『野遊び』に係る概要や活動、事例をお話いただきました。

ソーシャルマインドアクションの背景 〜これまでの歩みの源泉〜

北海道の十勝平野出身の後藤さん。地域のため、社会のため、未来のためにというソーシャルマインドアクションの源泉として祖父(後藤寅一さん)の存在を挙げます。全盲だった寅一さんは帯広市に日本で3番目となる点字図書館を設立するなど視覚障害者を幸せにするための活動を行なっておられました。そんな、寅一さんの座右の銘は「愛盲」。「見えないことは私の個性」と語る姿から「全ての今を受け入れること」「景観・言葉・関係へのこだわり」を学んだとのこと。そして、この学びが、場所と人・自然と人・人と人との豊かな関係が生まれ、楽しい時間を過ごすことが出来る『“ハレの場”づくり』に取り組む軸となっていると言います。

「言葉」を変えれば、「意識」が変わる!

後藤さんは、『“ハレの場”づくり』として、駐車場を活用した屋台村・畑を活用したフィールドカフェなど「“もったいない”場所」を活かした共創型の取り組みを数多く展開されてきました。これらの活動を行う土台となる意識づくりをしていく上での重要な要素として「言葉」の戦略的活用を挙げます。「競争社会(勝ち負けの社会)」ではなく「共創社会(共に創り上げていく社会)」を目指すのだと。「田舎には何もない」のではなく、「田舎には余計な物が何もない(むしろ地球の豊な景観・環境がある)」のだと。

『野遊び』による地方創生

野(森・里・川・海)に身を置いて遊ぶことで、社会のさまざまなしがらみ(ストレス)から抜け出し心と体のバランスを取り戻すことができる。これこそが『野遊び』の本質と言います。そして、『野遊び』活動は、「未利用資源(森・里・川・海)の活用」や「都市・世界と地方の人・モノの新たな関係性創造」など地方創生においても大いに可能性があると提起します。

『野遊び』の具体的な取り組み事例として、株式会社スノーピーク、一般社団法人野遊びリーグの事例をご紹介いただきました。

<事例1:スノーピーク十勝ポロシリキャンプフィールド(株式会社スノーピーク)>

2017年よりスノーピークが運営開始をした北海道帯広市に位置するキャンプ場。グランピングのモニタリングプログラムや体験型『野遊び』コンテンツの企画などを行う。

詳細URL:https://sbs.snowpeak.co.jp/tokachiporoshiri/index.html(スノーピーク十勝ポロシリキャンプフィールドHP)

<事例2:「野遊びの集い」=「せとうちNOASOBI会議キックオフ」(一般社団法人野遊びリーグ)>

2021年7月、広島県福山市の街中にある公園にて焚き火を囲んで『野遊び』。キャンプ宿泊などを実施。

詳細URL:https://noasobi.or.jp/news/detail/37(一般社団法人野遊びリーグHP)

グローバルな日本の「宝」を再考する

さらに、地方創生を考える上でグローバルの観点は外せないとのこと。世界の東端にある小さな島国(地球のド田舎・ド僻地)日本。これこそが日本の本質的な価値であると理解し、「変えていいもの・変えてはいけないもの」「お金があれば作れるもの・お金だけあっても作れないもの」といった切り口から日本の「宝」をそれぞれの地域でそれぞれの人が再考していく必要があると指摘されました。

そして、講演最後のメッセージは、

『地域のもったいない資源とこだわりの場所とモノを自分たちで活かして地域活性化をしたいとイメージし仲間と話し合い行動することが地域のためとなる!』

「チャレンジし続ける限り、失敗はない、成功していないだけ。」と話す後藤さん。誰かがやってくれるのを待つのではなく、自分を主語として動いていく。まずは小さな1歩から。動かないと始まらない。これから1歩を踏み出そうとしている方にとって力強い後押しとなったのではないでしょうか。

■トークセッション:東北での『野遊び』の可能性を語り合う!

基調講演後のトークセッションでは、後藤さんに加え、福島県西会津町で「ゲストハウスひととき」を営む佐々木さんと、宮城県丸森町でフィンランドサウナ施設「MARUMORI-SAUNA」を営む本多さんのお二人も交えながら、東北での『野遊び』の可能性について、探って行きました。

はじめに、佐々木さん、本多さんのお二人から取り組みの紹介をしていただきました。

取り組み紹介① =ゲストハウスひととき/佐々木さん

福島県西会津町で「ゲストハウスひととき」を営む佐々木さん。人口6,000人、森林面積8割、十三もの支流が集まる豊な森林と水資源がある西会津町。そんな西会津町で『ひとりひとりが自身をもって暮らせる社会を東北から』をvisionに掲げゲストハウスのほかカフェバー・チャレンジショップ・ワークプレイスなどなど、地域の人を巻き込みながら一緒にチャレンジをされています。

取り組み紹介② = MARUMORI-SAUNA/本多さん

宮城県丸森町でフィンランドサウナ施設「MARUMORI-SAUNA」を営む本多さん。起業支援の業務を行う中で地方創生の本質は、何かを教える(教わる)ことではなく、各自が手を足を頭を動かしていくことこそだと思い地域の仲間とサウナ事業の立ち上げを。豊かな東北の魅力を表す自分たちならではの言葉として『自然と共に暮らす〜Live with nature〜』を掲げ、丸森町そして東北に活動の炎を広げていきたいと言います。

つづいて、東北での『野遊び』の可能性を探るべく、ゲストのお二人と参加者から後藤さんに質問を投げかける形でトークを進めて行きました。

地域で「変えていいもの」と「変えてはいけないもの」

ゲストハウスひとときの佐々木さんからは、後藤さんが想う地域で「変えていいもの」と「変えてはいけないもの」とはとの質問が。

「空き家」や「空き地」など地域の“もったいない”をどう活かしていくかというマインドセットを持つことが大切だとのこと。地域の中で見たらいらないものでもグローバルバリューで見たらとても価値があるということもある。いらないからなくすということは簡単だけれども新しく作るということは難しいことを頭に入れておく必要があると指摘されました。

地域との共創のあり方

MARUMORI-SAUNAの本多さんからの質問は、地域との共創のあり方について。自身の活動を外に広げていくに当たってどのように共創を進めていけば良いのか尋ねました。

ただ、モデルに当てはめるのではなく、いかにして地域のための取り組みにしていくかをしっかりコミュニケーションをとりすり合わせをしていくことだと言います。そして、何より大切なことは地域の人が主役・主体となって進めていくという姿勢を持ち取り組みを行なっていく。自分ごとであるという認識を持つ。ということでした。

「場所のコンプレックス」とは?

モデレーターの竹川は、「場所のコンプレックス」の意味についての質問を。

多くの人は、あの地域にはこれがあるけどこの地域にはないと他の地域と自身の地域を比較してしまいがちだが、比較しネガティブに捉えるのではなく地域の個性なのだとポジティブに捉えるよう意識していくことが重要であるとのことでした。

「空き家」「空き地」もポジティブに

参加者の方からは、一般的にネガティブなイメージを持つ「空き家」「空き地」といったワードをポジティブに言い換えると、との質問がありました。

私は、「空き家」や「空き地」を「可能性の空地」と呼んでいるんです。と後藤さん。空いているということはチャンス・可能性あるということです。過去と今の比較ではなく、今と未来を描いていくことが大切とお話しをされました。

おわりに

最後に、参加者の方々に向けてのメッセージをいただきました。

「オンラインであっても出会いだと思っています。よく、イベントに登壇していると先生と言われることがあるのですが、先生と呼ばれることは好きではないんです。立場の上下ではなく同じ立場で繋がり学び合いをして行ければと思います。ぜひ、一緒にみんなで楽しいことをしていきましょう。」

人口が減っている、空き家・空き地が増えている、などなど。地域課題・社会課題だとネガティブに捉えてしまいがちですが、可能性がある!何でもできる!とポジティブに捉えていくことが楽しく明るい地域の未来を創る糸口になると強く感じる時間でした。楽しく明るい地域の未来に向けて共に1歩を踏み出しましょう。